世間をにぎわしている韓国最大手の航空会社「大韓航空」と2位の航空会社「アシアナ航空」が統合に向けて進んでいます。
以前私が書いた記事で、合併の可能性は低いといいましたが、まさかの急展開でした。
政府系の産業銀行はいつまでもアシアナ航空を持っておけないという事でしょうか。
買収後の企業規模は?
単純に合併したら1+1=2にはならないとは思いますが、昨年(2019年)の数字で考えると以下のとおりです。数字は国際航空運送協会(IATA)の統計からになります。
- 旅客・貨物輸送実績:大韓航空19位、アシアナ航空32位 合計すると世界7位
- 旅客キロ(旅客数に輸送距離を乗じる):大韓航空18位、アシアナ航空32位 合計すると10位でアメリカン航空に並ぶ
- 国際旅客輸送:大韓航空19位、アシアナ航空36位 合計すると10位
- 国際貨物輸送:大韓航空5位、アシアナ航空23位 合計すると3位
- 売上高:大韓航空(12兆2000億ウォン)、アシアナ航空(6兆9000億ウォン)、資産は40兆ウォン
数字だけ見ると、世界的な巨大航空会社の誕生になります。
買収劇、今はどの段階にあるのか?
2020年11月16日に大韓航空を傘下に置く韓進(ハンジン)グループがアシアナ航空を買収すると発表しました。
このコロナ禍で資金繰りも厳しい大韓航空ですが、韓国産業銀行が韓進グループに8,000憶ウォン(約754億円)規模の投資を行い、大韓航空はアシアナ航空の株式を焼く1兆5000億ウォンで取得する。株式は来年2021年6月30日に取得予定で、持ち株比率を63.9%の最大株主となります。
これに対し、韓国の国土交通部も「航空産業の危機克服と発展の機会になる」と歓迎の意向。
傘下のローコストキャリア(LCC)はどうなるのか?
大韓航空、アシアナ航空ともに子会社、グループ会社のLCCはどうなるのでしょうか?
報道によると、大韓航空の子会社「ジンエアー」、アシアナ航空の子会社「エアソウル」、アシアナ航空のグループ会社「エアプサン」と3社ありますが、一つにまとまり巨大LCCになる可能性が高いとのことです。
韓国にはさらに、済州航空、イースター航空、ティーウェイ航空があり、さらにフライ江原(襄陽国際空港拠点)、エアプレミア(仁川空港拠点)、エアロケイ(清州空港拠点)となんとLCCだけで9社もあり、世界最大となっています。
人口約5000万でそこまで広くない国土に何と巨大な国土のアメリカと同じLCCの数は不要であり、過当競争になることが目に見えてます。韓国内は、韓国版新幹線「KTX」があちこちの都市に行っておりますので、飛行機での移動が絶対不可欠なのは済州島くらいです。
正直言って多すぎますので、再編は必要です。
両社の従業員はどうなるのか?
今年の6月末現在で、大韓航空17,209人、アシアナ航空8,797人の従業員を抱えている巨大企業ですが、今後どうなるのでしょうか?
早速両社の労働組合が強い懸念を表明する声明を発表しています。ただし、雇用維持原則により買収が推進されるとしているとのこと。韓国産業銀行の副頭取は、重複人員は1,000名程度と推測しているが、自然現象の人員や新規事業に必要な人員などを考慮して、人為的な構造調整は行わないという確約を韓進からもらったと明かしている。
ただ、大韓航空とアシアナ航空では路線重複している都市も多いため、間違いなくその部分は整理が行われると思われます。日本地域は基本路線が重複しているので、各都市の支店では色々と問題が起こる可能性が十分あります。
独占禁止法の問題は?
ここは新聞各記事を読んでいくと、いろいろなことが書かれていますが、独占・寡占を理由に反対意見の可能性もあるとのことですが、アシアナ航空は単体での企業再生は不可能とみられており、この買収が独占禁止法に違反するという判断になる可能性は低いようです。
オーナーリスクは?
大韓航空と言えば、「ナッツリターン」を思い出します。
オーナー一族が上層部を牛耳っているために起こった事件ですが、さらに強力な航空会社になればこの問題も心配です。これに関しては、オーナー一家の倫理経営を監督する独立機関を設置し管理していくとのこと。
最後に・・・。
最初は否定的な見方をしておりましたが、国も動いており、買収はどんどん進むものと思われます。
本格的な動きは来年になると思いますが、大韓航空とアシアナ航空の動きには注目です。
今後、他の航空会社もこのコロナ禍で大変な状況になっておりますので、再編の可能性は十分にあります。
まさか日本でもJALとANAが・・・。という事はないとは思いますが・・・。
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