JTB、KNTなど相次ぐ人員削減で苦難に陥る旅行会社の将来は?

ここまで耐えてきた大手旅行会社がついにリストラを発表し始めました。GoToトラベルで多少は持ち直したとは思いますが、オンライン系の旅行会社に需要は流れ、従来の大手旅行会社には多くの恩恵はいってないのではないかと思われます。

現在旅行会社がどのような状況、どのような発表をしているのかまとめてみます。

目次

JTBの人員と店舗の大幅削減案

グループ全体で27,212名(2020.03.31現在)の従業員数を誇る日本で一番大きい旅行会社JTB。文系学生からの就職ランキングも例年上位に位置する人気の就職先です。

そのJTBが発表した大型の削減案は下記のとおりです。

  • 人員削減6,500人
  • 店舗数115店舗閉鎖(19年度比25%削減)
  • 国内のグループ会社統廃合10社以上
  • 海外190拠点以上閉鎖
  • 賞与と月例給を合わせて約3割の削減(労働組合と協議中)
  • 22年度の新卒採用見合わせ

人員は約24%の削減となり、店舗数等含めかなりの大幅な削減となります。

コロナウィルスの影響で旅行の不振、特に海外旅行の回復には当分時間がかかるという判断での大胆な削減案だと思われます。ただし、コロナの影響だけでは私はないと思います。

徐々にリアル店舗からインターネットでの予約にシフトしつつある旅行予約ですが、正直JTBは遅れていると言わざるおえません。

日本観光振興協会による「旅行・交通」カテゴリ内WEBサイトのPCからの閲覧者数

順位サイト名2019年閲覧者数
1じゃらんnet30,700,000
2楽天トラベル29,800,000
3トリップアドバイザー23,200,000
4東日本旅客鉄道18,600,000
5全日本空輸(ANA)18,100,000
6日本航空(JAL)17,300,000
7Yahoo!トラベル17,200,000
8LINEトラベルjp15,900,000
9ジェイティービー(JTB)14,100,000
10旅行のクチコミ フォートラベル14,000,000
https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/autoupload/200204releasev3.pdf

日本観光振興協会による「旅行・交通」カテゴリ内WEBサイトのスマートフォンからの閲覧者数

順位サイト名2019年閲覧者数
1じゃらんnet32,400,000
2楽天トラベル28,300,000
3東日本旅客鉄道20,800,000
4トリップアドバイザー19,100,000
5全日本空輸(ANA)16,800,000
6LINEトラベルjp16,600,000
7エイチ・アイ・エス(HIS)16,300,000
8日本航空(JAL)16,200,000
9Yahoo!トラベル14,700,000
10ジェイティービー(JTB)12,800,000
https://www.nihon-kankou.or.jp/home/userfiles/files/autoupload/200204releasev3.pdf

ご覧の通りNO1旅行会社も今伸びているネット予約ではベスト10には入っているものの下位に甘んじてしまっています。

2年ほど前旅行会社にいた方がホテル業界へと転職された人と話をする機会がありましたが、予約全体から見て大手旅行会社からの予約は非常に少なく、じゃらん、楽天トラベルなどのオンラインサイトで70%、自社サイトで20%、大手旅行会社のシェアは10%しかないとの事でした。

完全にインターネット予約に関しては出遅れてしまっていますので、ここの改善は急務となります。

国内旅行に関しては、航空会社が旅行会社に出すパッケージ商品用の価格を止めて、空席状況に合わせて価格が変動する方へシフトをしたと聞きました。そうなると旅行会社も決まった価格がないため、リスクを負って商品作るか、高めに設定するかをしないとパッケージ商品が作れなくなりました。

航空会社側もインターネットで自由に航空券とホテルを組み合わせることができるダイナミックパッケージへシフトしており、ますますリアル店舗が不要になってきます。

海外旅行に関しても、ヨーロッパ方面などはまだまだパッケージ商品が必要ですし、店頭での販売もあるとは思いますが、韓国などの近場は個人旅行が当たり前になってきており、自分でホテルと飛行機を取って移動は自分自身で出来るという方も増えており、ますます旅行会社の存在価値が厳しくなっています。

KNTも削減と大幅改革を断行

近畿日本ツーリスト(KNT)やクラブツーリズムが傘下のKNT-CTホールディングスもJTBの発表の前に大規模なリストラや店舗削減、そしてなんと言ってもメインのパッケージブランドである国内旅行「メイト」、海外旅行「ホリデイ」を2021年3月末で終了するというのには驚きました。

KNT-CTホールディングスが発表した削減案は以下のとおりです。

  • 全従業員約7,000人の約3分の1を2024年末までに削減
  • 店舗数138店あるKNT個人旅行店舗は約3分の1に縮小
  • パッケージツアーのブランド 国内「メイト」海外「ホリデイ」廃止
  • KNT団体旅行支店を95支店から約70支店へ縮小
  • 賞与も大幅に減額、11月からは本給、各種手当も減額

個人的には、JTBより深刻な状況なのは近畿日本ツーリストだと思っています。KNTもオンライン化へのシフトとなっておりますが、上記記載のランキングには圏外ですし、正直全く追いついていない感じです。

団体旅行と一番の強みであるクラブツーリズムを生かした展開が一番良いのではと思っています。

他の旅行会社も苦しい状況

ニュースサイトには出ていませんが、HIS、日本旅行、阪急交通社なども厳しい経営状況かと思われます。HISは多角化戦略を取っているのでまだ旅行しかない旅行会社よりはいいかもしれませんが、頼みのGoToトラベルはツアーというよりは高級ホテルだけを予約して自家用車で行くという形態が多く、予約はじゃらんや楽天などのオンライン旅行会社もしくは宿のサイトに直接予約されているのが現状です。

この苦難の旅行会社の中に人員大量採用の会社が現れる!

ほとんどの旅行会社が悲惨な状況と思いきや、航空券予約販売サイト「skyticket」を運営する株式会社アドベンチャーが旅行、観光、航空業界の会社に現在お勤めになられている方及び内定取消になった新卒学生を対象として人員の採用を実施すると発表したのです。

しかもなんと300名と大量採用!

勢いのある会社だとは思っていましたが、ここまでの大量採用には驚きました。

これを見ても、時代はまさにオンラインにシフトしているといっても過言ではありません。

私が思う将来の旅行会社の今後

コロナの影響がもろに出ている旅行業界ですが、コロナがなくても今後は淘汰される時代がやってくると思っていました。その淘汰の波が今回のコロナで早まっただけかもしれません。

官公庁のデータによると、平成21年とちょっと古いデータですが、第1種旅行業者から旅行業者代理業者まで入れた旅行業者数は、なんと10,436社もあるようです。

旅行業は、旅行総合取扱主任者と若干の資金があれば開業できますので、比較的個人でも始めやすいと思います。特に大手や地場に根付いた旅行会社出身の方が独立して、個人でやられているという方も多く、下手に大手に所属するよりはるかに収入が増えると思います。ただしお客さんを持っている営業マンが独立すればの話です。(個人でやる場合は立替金が多いので注意が必要です)

将来、旅行会社はここまでの数は不要であり、淘汰されていくと思われます。ただ全部なくなる業界ではありません。私は下記の会社、業態は残っていくと思っています。

  • 大手旅行社数社(JTB:団体、HIS:個人、阪急:メディア)
  • オンライン旅行社(じゃらん、楽天、エクスペディアなど)
  • 家族や少人数でやっている地元に根付いた小さな旅行社
  • 特化型旅行社(高級ツアーのみ、秘境のみ、登山のみ等の専門特化型)

こういった旅行会社は残っていくと思いますが、中途半端な大手旅行社、中規模で何でも取り扱う総合旅行会社などは今後厳しいと思っています。

旅行は楽しむものであって働くものではない。旅行会社でも働いた経験がある私の持論です。

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