コロナウィルスの影響で苦境が続く航空業界ですが、つい先月の2020年10月5日に事業継続を断念し、全路線の運航を休止、2020年12月5日に廃止と発表しました。しかし11月17日に破産手続き開始の申し立てを行うこととなりました。
大韓航空によるアシアナ航空の買収に始まり、ここ最近はコロナ禍で厳しい経営状況の航空会社の暗いニュースが続いています。エアアジアジャパンが破産となり厳しさが一層認識されました。
エアアジアと言えばマレーシアの格安航空会社(LCC)であり、タイ、インドネシアなどにグループ航空会社を持っている。エアアジアジャパンはどういう経緯をたどって行ったのか詳しく見ていきます。
ANAとの合弁で始まった日本進出
- 2011年8月に全日空(ANA)と提携し、エアアジア・ジャパンを設立
- 2012年8月に、成田を拠点として札幌、福岡、那覇線就航
- 2012年10月には、ソウル仁川線、プサン線を就航
- 2013年3月期営業損益は35億円の赤字
- 2013年6月に経営方針をめぐり対立し合弁事業を解消。ANAが100%子会社化
2011年にエアアジアがついに日本に上陸。ANAとの合弁でスタートしますが、就航して1年持たずに終了となりました。
原因についてはANAとエアアジアでは双方の言い分がありました。
エアアジアのやり方では限界があった。東南アジアで成功したエアアジア流ビジネスは日本では不向き
他のエアアジアグループの事業に比べてコストが3倍。3月期の決算が35億の赤字となり、これ以上の損失を見過ごすわけにはいかなかった
当時は同じ成田空港起点のジェットスタージャパンとの競争でもあったが、利用率でも2割ほど差をつけられており苦境に立たされていました。販売が苦戦した理由もいろいろとあるようです。
- インターネット予約方式のみにエアアジア側がこだわった
- フルサービスキャリアのANAとローコストキャリアのエアアジアとでは経営が異なるため、内部意見の対立
- 旅行会社を使わない手法
- 一部英語の説明が入ってしまっているWEB予約システム
当時の記事には、合弁解消になった原因を上記の理由を挙げられていました。
その後ANAが子会社化したジェットスターは、2013年11月に社名を「バニラ・エア」へと変更し、2019年10月26日にピーチ航空に統合され、運航を終了している。
諦めなかった日本進出
ANAとの合弁を解消したエアアジアですが、日本への再進出計画を明らかにして、4、5社と交渉をすでに始めました。そして次の就航の時には成田空港は拠点としないと明言しています。
元々成田空港は、24時間空港ではなく発着料も非常に高いため、費用面の圧迫もあったようです。
中部国際空港を拠点として新会社設立
- 2014年5月1日に「エアアジア・ジャパン」設立
- 2014年7月1日に楽天、ノエビア、アルペンなどから出資を受け、2015年夏ダイヤから2機で就航すると発表
- 2015年10月6日 国土交通省より、航空運送事業の許可取得
ここまでは多少遅れたものの順調に進んでいたが、2016年4月就航予定であったが延期、同年7~8月頃就航予定を再延期、10月頃就航予定だったが再延期、2017年1月までの就航を目指していたが、ついに無期限延期となった。
- 2016年4月の就航を目指していたが、2月に就航時期を「複数の要因」から7月に延期
- 2016年5月には「安全面の体制構築」を理由に秋以降へ変更
- 2016年9月には「事業の選択と集中」を理由に仙台線の取りやめ発表と札幌就航を17年初旬へ変更
- 2017年1月には「安全運航に向けた社員訓練のスケジュールの遅れ」を理由に無期限就航延期
なぜここまで遅れに遅れたのかはいくつか理由があるようです。
- 整備、乗務員、飛行などの訓練、検査、国交省の試験などの大幅な遅れ
- 新規就航に欠かせない国土交通省航空局とまともに交渉できる人材がいない
他にも様々な理由はあるようですが、元々初代社長はANAとの合弁会社時代のANA出身の方が新生エアアジアジャパンにも残っており社長の座についており、その後スカイマークの会長を務めた方が代表取締役に就いたが、一向に進展せず、2017年にはこの方も健康上の理由で退任しており、日本の大手航空会社での実務経験者が上層部にいなくなってしまいました。
2017年10月29日 ようやく就航!
紆余曲折をへて、2017年10月29日に名古屋中部セントレア~札幌新千歳に1日2便運航を開始した。
就航時のセール価格はなんと片道「5円」。ご縁を大切にしたいという意味が込められたようです。
2018年には中部~新千歳間を1日3往復へと増便。
2019年2月1日 ついに国際線就航
2019年2月1日には中部~台北線を1日1往復で就航。就航記念価格は、片道390円。
その年には仙台線も就航し、ようやく拡大路線へと舵を切り始めたが、翌年2020年の新型コロナウィルスの影響で4月9日に全便運休を発表。8月に就航延期していた福岡線を就航させ、他国内線も需要を見ながら再開予定としていた。
2度目の日本市場撤退を決定
国内線を運航していたものの10月から再度全便運休を発表。9月にはエアアジアグループのCEOがインタビューで日本事業について「厳しく検討。近く決定を下す」と述べていたが、10月5日に事業廃止を発表。12月5日付で全路線を廃止すると国土交通省に届け出ました。
破産手続開始決定
2020年11月17日エアアジア・ジャパンは破産手続き開始の申し出を行った。
負債総額は約217億円。このコロナ禍で破産した日本の航空会社は初めてであり、今の航空業界の苦境を物語っている。
航空券の払い戻しは出来るのか?
保全管財人によると、販売済み航空券の払い戻しには5億2000万円以上が必要で、対象は旅行代理店での販売分を除く直接購入だけで約2万3,000人に上るようです。
航空券代金の相当額は、自動的にクレジットアカウント(エアアジアグループのフライトやオプション費用の支払いで利用できる金券のようなもの)にて返還するとのこと。
航空券の返金に関しては、破産債権として扱われ、公租公課や従業員への給与支払いといった労働債権が優先されるため、払い戻しに応じる原資はないと見られており、返金に関しては厳しいと思われます。
ただし、保全管財人からは、「何らかの支援ができないか、取締役を派遣している株主(楽天、ノエビア、アルペン等)と協議したい」としている。
今後の航空業界の行く末は・・・
コロナウィルスによる移動の制限があり一気に落ち込んだ航空業界。国内需要はGoToトラベル実施でようやく需要が少し戻ってきており、フライトキャンセルも減ってきたが、ここにきて全国で感染拡大が続いています。
JALやANAの異業種への出向、機材の整理などで延命はしておりますが、航空会社は飛行機を飛ばしてこそお金が動きますので、飛ばさなければなりません。
韓国のようにさすがにJALとANAの統合というようなことはないとは思いますが、さすがに再度緊急事態宣言のようなものが出て自粛となりますと、もう耐えられないところが出てくる可能性もあります。
非常に難しいとは思いますが、経済を回しつつ感染抑制。これしかないと思います。
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