コロナ禍で苦しんでいる観光業。
その中でも厳しいと取りだたされているのが航空業界と旅行業界。
そんな私も航空会社で旅行会社をメインに営業活動をしてきました。
そんな私から見た旅行業界の現状と未来の行方について書きたいと思います。
旅行会社の実情
「旅行を仕事にできる」
華やかで楽しそうな仕事に見えると思います。
しかし現実は甘くありません。
営業マンになれば、お得意様のところへ訪問して旅行の受注、新規で飛び込みなんていうのもあります。
そこで仕事の話があれば良いですが、旅行の仕事をもらえても基本、相見積もりで数社間で価格と企画内容の戦いです。
単に価格が安いところに決まるのであれば良いですが、人間関係や過去の実績なんかもありますので、単純にはいきません。
昼間はお客様のところへ訪問し、戻ってきてから企画書作成、見積もりや行程表作成をしますので、残業が当たり前の業界です。
そしてかなりの薄利な業界です。旅行会社にもよりますが平均15%~20%が利益率ではないでしょうか。
内勤の方たちも手配に追われ、企画造成部門はちょっと前までは上期下期にメインのパンフレットを作成し、期の途中でサブのパンフレットを造成すればよかったですが、今は目まぐるしく価格が変わるため、もう休むことなくずっと商品造成です。
旅行会社に入ったら添乗で海外に行ける!視察で勉強しに旅行へ行ける!航空券が安く手に入るなどの特典が昔はありましたが、薄利多売の業界になり忙しすぎて、添乗は外注まかせになり、視察などはお断り、昔はあった優待などは今はない!などと本当に厳しくなっています。
旅行業界関係者限定の料金でホテルや旅館、航空券などそういった特典はまだあったりしますが給与も安く、休みも取れず、なかなか行けない!という事を聞きます。
全ての旅行会社がそうではありませんが、1人当たりにかかるウェイトが大きく、せっかく手配したのに現地ホテルの方の対応が悪かった、現地の観光バスが古かったとか、旅行会社が悪いわけではないのですが、旅行会社の方のせいになったりします。(究極は天気が悪かったのもその日にその行き先を設定した旅行会社が悪い。となるようです)
添乗員がいればまだ現地で対応可能ですが、お客様だけの場合で現地でトラブルがあればすぐに担当者の携帯に電話が入ってきたりと、休みの日ものんびりできません。
悪い事ばかり書いてしまいましたが、もちろん良い事もたくさんあります!
しかし、私が旅行会社の方を見ていると、そのような点が非常に業界として問題だと感じています。
旅行業界を目指す方へ
一昔前まではJTBが就職ランキングで文系部門では1位になるなど人気の職種でした。
しかし時代は変わり今までのような営業スタイルからインターネットへと切り替わってきています。
もし私の子供が旅行会社に勤めたい!と言っても全力で阻止します。
但し旅行会社が今後無くなる事は絶対にありません。むしろまだまだ伸びる旅行会社もあるんです。
旅行会社でも業態が色々あります。まだまだ発展する業態の会社を選びましょう!
旅行会社売上高ランキング
2020年にコロナウィルスが蔓延し、観光業は大ダメージを受けましたので参考になりませんが、2018年のニュース並びに観光庁が出している2019年旅行取扱状況速報を元に見てみましょう。
帝国データバンクはこのほど、「2018年の国内旅行業者の経営実態調査」を発表した。同社の企業概要データベース(147万社)のなかから2018年決算(2018年1月期~2018年12月期)の売上高が判明した国内旅行業者3047社について分析したもの。帝国データバンクが、国内旅行業者に関する経営実態調査を行なうのは今回が初めて。
これによると、2018年の売上高合計(2016年~2018年の売上高が判明した2881社)は、前年比1.6%増の4兆6758億円。JTBやエイチ・アイ・エス(HIS)、日本旅行などの大手旅行会社を中心に増収となった。インバウンドの増加を受けて宿泊施設が値上げしたことが客単価の上昇に繋がった。
2018年決算における売上高ランキングでは、単体業績で1位がHIS(4596億円)、2位が日本旅行(4297億円)、3位がジャルパック(1751億円)。連結業績での売上高ランキングでは、1位JTB(1兆3229億円)、2位HIS(7285億円)、3位KNT-CTホールディングス(4051億円)で、JTBグループが調査対象となった旅行業者全体の売上の3割弱を占めた。
また、2017年と2018年の年売上高が判明した2918社のうち、2018年の増収企業は634社で、減収企業576社を上回った。増収企業はインバウンド特化型が多く、日本文化の体験型ツアーが業績拡大に寄与したケースが目立った。海外法人との事業提携や海外サイトのクチコミで集客増加となった事例も見られたという。
なお、対象企業を従業員数別でみると「10人未満」が2436社(シェア79.9%)と約8割を占め、100人以上の企業は、100人~1000人未満が71社(同2.3%)、1000人以上は9社(同0.3%)と合計で3%にも満たなかった。小規模事業者の内訳はOTAやランドオペレーターが圧倒数を占めている。
旅行会社の売上高ランキング2018、連結ベースで首位はJTBで1.3兆円、帝国データバンクが初の国内旅行業者の実態調査|トラベルボイス(観光産業ニュース) (travelvoice.jp)
さらには2019年分の取扱高が掲載されている観光庁のサイトもご覧ください。(こちら)
この旅行会社のランキングを見て、あれ?と思った方はいらっしゃいませんか!?
そうです。インターネット専門の旅行会社が含まれていないんです。
リクルート(じゃらんnet)、楽天トラベル、エクスペディアやブッキングコム、エアトリなども含まれておりません。
数字が発表されていないので含まれていないのですが、取扱量を勘案すると、リクルート(じゃらん)は業界第2位、楽天トラベルも国内旅行だけの数字を見れば業界3位、エアトリも1200億ほどの取り扱いがあったようです。
10年ほど前までは圏外だったインターネット専門旅行会社が老舗の旅行会社を一気に追い越して上位に食い込んでいるんです。
旅行業界では何が起きているのか・・・
1人1台スマートフォンを持ち、何でもいつでもインターネットで検索して買い物もネットでという時代になってきました。
一昔前までは旅行も旅行会社のカウンター又は電話で予約をしてクーポンや航空券のチケットを受け取って旅行に行くのが当たり前でした。
ところがインターネットの普及に伴い、必ず必要だったチケットが特に航空会社ではEチケットになり、チケットをメールで送るようになりました。
旅館やホテルも昔は旅行会社が発行するクーポン券が必要でしたが、どんどんクーポンレスになっています。
団体旅行はまだまだ旅行会社の手配力が必要ですが、個人旅行や出張などはネットで完結する方が安いし楽という考え方が主流となりどんどんインターネット予約へと流れていっています。
コロナ禍で、さらに大きな変化が起きている
2020年に蔓延したコロナウィルスによって旅行業界も一変してしまいました。
たくさんの店舗を構え、各県や主要都市に店舗を置き、営業、造成、手配など多くの人材を必要とする大手旅行会社が軒並み大幅赤字となり、希望退職、店舗閉鎖などが今でも続いています。
しかし、インターネット中心の旅行会社は店舗は東京のみ、もしくは東京、大阪のみという会社が多く、カウンター店舗はありません。さらに営業マンもいませんので人材も大手旅行社よりは大幅に少ないですのでリストラや閉鎖といった言葉は一切聞かず、むしろ優秀な人材確保に動いている旅行会社もあるくらいです。
旅行のインターネット予約への移行はこれからもますます増えていくと思われます。
ネット予約が不安と思っている方は年々減っており、ネット予約に抵抗のない人がどんどん増えています。
さらには、旅行会社の収益の柱の一つである「出張需要」もコロナ明けでも100%には戻らないのではないか?という話もあります。(これは航空会社にとっても重要な需要ですが・・・)
旅行業界は本当に大きな転換期を迎えたと言っても過言ではありません。
今後どのような旅行会社が生き残っていくのか?
私が思うには生き残っていくのは以下のような旅行会社だと思われます。
- 予約、発券、決済まで自動で終わるインターネットシステムを持つ旅行会社
- 大企業のグループに属した旅行会社(鉄道系、航空会社系など)
- 専門特化した旅行会社(秘境のみ、海外登山のみ、ビジネスクラス旅行のみなど)
- 中大規模旅行会社からお客様を持って独立して1人、2人でやっている小規模旅行会社
旅行会社は比較的簡単に独立、起業が出来ます。
そしてお客様さえ持っていれば、少人数でやった方が儲かります。
ですので日本全国で8000社近く旅行会社があるのですが、このコロナでかなりの旅行社が廃業しました。
まだまだこのコロナの影響は長引くと思いますので、さらに倒産、廃業する旅行会社は増えると思われます。
今は暗いこの旅行業界ですが、コロナ明けは明るい未来が待っていると思います。
しかし、かなりのリストラをして店舗を統廃合した大手旅行会社はコロナが終息したからと言って元に戻すことは無いでしょう。
旅行だけで食べていける時代は終わったかもしれません。
旅行をメインとするのは変わらないものの、様々な事業をして多角化経営で、万が一このような事が起こってもすぐに別事業で生きていけるような業務体系が必要です。
まさに今はその準備期間として捉え新しい道を早急に模索することが必要だと思います。
旅行は平和産業です。平和でなければ不要なもの。
しかし人々を豊かにできる産業で、人生になくてはならないものです。
1日でも早くこの世の中が正常に戻ることを願ってやみません。
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